一坂太郎『長州奇兵隊 勝者のなかの敗者たち』(中公新書2002年)
2008-04-09


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ブックオフで見つけた一冊。  最近、戊辰戦争前後から日露戦争にかけての入門書を買っては、読んでいます。私が探しているのは、社会経済史的で平板な叙述ではなく、より多角的であり、より庶民の立場にたった叙述がなされている本です。政治史でも、権力に近い人たち中心のものではなく、歴史に埋れていった人たちに光を当てたものに惹かれます。
 この本は、そういうひとつ。
 サブタイトルにあるように「勝者のなかの敗者」を取り上げている点も興味深いものがあります。
 《はじめに》にはつぎのように書かれています。

 昨今の流行は「明るく」「楽しい」幕末維新の歴史。それを学んで「元気」になり「誇り」をもちましょうというのは、ちょっと虫がよすぎるのではないでしょうか。歴史に学ぶ、と言いながら、単に創られたロマンに酔っているだけのような気がする。そこで、私はあえて「暗く」「悲しい」幕末維新を語りたい。
 時代が大きく変動するとき、避けられなかった宿命は、たとえ「勝者」であっても気分が滅入りそうなほど悲惨な歴史。しかし激痛に耐え、乗り越えたからこそこんにちがある。そのことこそが本当の「誇り」であり、「元気」を呼び覚ます歴史になってほしいと思っております。何かにつけて「改革」「変革」という言葉が多用、乱用される昨今ならなおさらです。
 叙述の方法も独特です。
 なお、こうした歴史の本には不似合いかもしれませんが、あえて談話調で書きたいと思います。私がここに書きとめたいのは、生活の中で語り継がれ、放っておくと風化しそうな幕末維新史です。その中に、何らかの「真実」を見たいのです。公的な記録を並べたり、史料をひとつずつ検証していく作業が主ではありません。語り継がれてきたものならば、談話調のほうが書きやすいし、伝わりやすいと考えました。
 ここに書かれているように、これまで読んだことのないような歴史を発見できる本でした。
[本]
[歴史]

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